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産後の2週間健診とメンタルヘルスケア

健康Navi

掲載号:mamaid 2019年3月20日号

 

どんなに忙しくても自分のカラダについて、そして家族の健康に関心を持っておくのは大切です。このページは医療や健康に関することをその道の専門家にわかりやすく教えてもらうコーナー。女性として、母として知っておきたい基礎知識をおさえておきましょう。

TOPIC01 産婦健診診査の健診助成制度を知っていますか?

厚生労働省は、2017年度より産後の健診費用を助成する事業をスタートさせました。助成費用は産後2週間と1ヶ月健診の2回、それぞれ5千円が上限で、国と市町村が半分ずつ負担します。一般的な健診費は約5千円のため、事業を導入した市町村では多くの人が無料で健診を受けることができるようになりました。2週間健診では、赤ちゃんの健康状態(体重増加、黄疸の程度)、ママの健康状態(おっぱいの状態、精神的な状態)をそれぞれ助産師がチェックし、必要に応じて専門医による診断を行います。産後2週間というと、退院して約1週間。首も座らない赤ちゃんを連れて健診を受けるのは、大変だとは思います。しかし、この「産後2週間」がとても重要な時期であることがわかってきたのです。厚生労働省の研究によると、産後うつなどの精神的不調がはじまるリスクは、産後1~2週間が高く、1ヵ月健診では遅すぎることが明らかになりました。

TOPIC02 10人に1人が経験する産後うつ
産後は、慣れない新生児のお世話に加え、2~3時間おきの授乳が続き、まとまって眠れないママが多いものです。寝不足が続き、1日中泣いている赤ちゃんのお世話をしていると、普通の人でも気持ちが滅入るものです。生涯うつにかかる人の割合は、10人に2~3人とされ、誰しもがかかりうる病気とされています。ただ、女性の場合、出産後にうつになる人が多く、約10%のママたちが産後うつを経験しています。産後うつになると、自分ではどうすることもできず、やる気がでない、起きられないなど、虐待とまでいかなくても赤ちゃんのお世話ができなくなってしまう場合もあります。2週間健診では「エジンバラ産後うつ病自己質問票」を使用し、ママの心の状態を探っています。実際、全ての質問票に正直に答えているかという疑問もありますが、医療側が積極的に働きかける必要性があるのです。
TOPIC03 ママの自殺という悲しい現実

日本は、世界的にみてもレベルの高い周産期体制が提供されており、妊産婦の死亡率は10万人あたり3.5人と非常に少ない国です。ところが、東京都23区で妊産婦死亡の原因を10年間まとめた結果、病気よりも自殺が最も多い死亡原因になっていることがわかったのです。中でも、産後1~2週間でうつを発症し、その後1ヵ月~4ヵ月くらいの間に命を絶つ傾向が明らかになりました。また、赤ちゃんが死亡する時期も、生後0ヵ月~1ヵ月未満が最も多いため、赤ちゃんとママの命を守る産後の早期ケアが必要となるのです。

TOPIC04 ママだからこそ、声をあげていきましょう
うつは、適切な治療を行えば治る病気です。つまり、産後うつを早期に発見し、治療を開始することで、大切な赤ちゃんとママの命を助け、虐待を防ぐことができます。そのためには、誰もが安心して出産・子育てができる支援として、これからは2週間健診が特に重要な役割を担うことでしょう。しかし山形県では、産婦健診診査の健診助成制度を導入している市町村がないため、有料で健診を受けなければなりません(各医療機関によって料金は異なります)。仙台市では今年の1月より健診助成制度がスタートしました。ぜひ山形でもすべての市町村で健診助成制度の導入が進み、産後ケア事業の充実と共に、妊娠から出産まで切れ目のない支援がママたちに届くことを願ってやみません。

アドバイスいただいたのは…

山形県立中央病院
産婦人科医 阿部 祐也

●山形市大字青柳1800番地
●代表:023-685-2626

2月16日に開催された「県民健康講話」の内容を要約いたしました。


最新の情報とは異なる場合がありますので、ご確認の上、お出かけ下さい。

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