山形の秋の風物詩「芋煮」。歴史や地域ごとの味付けの違い、定番の醤油・味噌レシピから、日本一の芋煮フェスなどイベント情報まで、芋煮の魅力を完全ガイドします。
1.山形の秋の風物詩「日本一の芋煮会フェスティバル」
2.芋煮の歴史とルーツ
3.山形の地域別・定番味付け2選
・村山、最上、置賜の「牛肉×醤油×里芋」
・庄内の「豚肉×味噌×里芋」
4.芋煮会イベント情報まとめ
全国が注目する秋の一大イベント「日本一の芋煮会フェスティバル」は山形県民の芋煮愛の強さから開催されています。1989年からスタートして、今年で37回目です。
直径6.5mの三代目大鍋・鍋太郎と移動式クレーン仕様機バックホーを使って作る様子は、迫力満点。約30,000食の芋煮を用意するため、調理は早朝から始まりおよそ4時間かけて作られます。気になるバックホーですが、新品納品後、一度分解して手作業で機材油分の除去を行い、代わりとして食用バターを潤滑油として使用しています。ですから、当日は安心して芋煮を満喫することができます。
開催日程 / 毎年9月馬見ヶ崎河川敷
アクセス / 行 山交バス 山形駅東口(沼の辺行き)〜山形消防署前
帰 山交バス 山形消防署前(東海大学山形高前行き)〜山形駅東口
山交バス 山形消防署前(かみのやま温泉高松葉山行き)〜山形駅西口
シャトルバス / 山形ビックウィング駐車場 ⇄ 芋煮会フェスティバル会場
山形県庁駐車場 ⇄ 芋煮会フェスティバル会場
シャトルバスは有料です。
シャトルバスが出る無料駐車場は大変混雑が予想されますので、時間に余裕を持ってお越しください。山形市営駐車場(有料)からは特別無料シャトルバスが運行されます。また、事前予約をしておくことで当日はスムーズです。来場検討中の方はホームページをご覧ください。
日本一の芋煮会フェスティバル公式サイト/ https://imoni-fes.jp/
芋煮のルーツは、江戸時代初期といわれています。当時、山形県中山町長崎付近は最上川舟運の終点でした。船頭たちは荷受人が来るまで、近くにあった里芋の名産地である小塩集落で里芋を手に入れ、京都から運ばれた積み荷の棒鱈と一緒に鍋で煮て食べていたそうです。
それが芋煮の元祖、芋棒煮です。そのとき、側にあった松の枝に鍋をつるして食事をしていたので、その松は鍋掛松と呼ばれるようになりました。初代は大正6年に大風で倒れ、2代目はJR(旧国鉄)左沢線の工事で切られました。何度か復元された現在、五代目鍋掛松が芋煮会を楽しむ人々を見守ってくれています。芋棒煮は日本三大芋煮の一つとされており、ほかに島根県の芋煮、愛媛県のいもたぎがあります。
現代では当たり前のように、里芋と牛肉が芋煮の材料としてメジャーですが、一般的に芋煮に牛肉を入れ始めたのは、大正初期以降のことです。それまでは仏教(肉食禁止)や牛は労働力として考えられていたため、牛を食べる考え方は忌み嫌うものとして扱われました。
明治4年、米沢の藩校興譲館に招かれた一人の外国語教師(チャールズ・ヘンリー・ダラス氏)が米沢牛を土産に横浜に帰り、イギリス人仲間が絶賛したことをきっかけに全国に広まっていきました。明治天皇が肉食を解禁したのも同時期です。今では芋煮、米沢牛ともにご当地グルメとして人気を誇っています。
山形県は4つの地方(村山・最上・庄内・置賜)に分かれています。多くの家庭では牛肉を使用した醤油ベースの味付けが一般的ですが、材料は家庭ごとに違いがあります。中でも、地方ごとに大きな違いがあるのが、芋煮文化の面白いところです。
村山地方では、里芋、牛肉、こんにゃく、長ネギのほか、ごぼうやきのこ類。豆腐を入れるところもあります。
最上地方では、特産のぶなしめじや舞茸などをたっぷり入れるのが特徴的です。村山と庄内に面しているため、どちらにも似ている芋煮です。
庄内地方では、厚揚げが入っている、豚肉と味噌の味付けが主流で、人参を入れる場合もあるようです。
置賜地方では、ごぼうや大根、豆腐を入れるところや、隠し味に味噌を使うところもあります。
地域や家庭ごとに材料が違うのは、芋煮の魅力の一つです。まだ誰も試したことがないような食材を使って、あなただけの芋煮レシピを考えてみてはいかがですか。
定番である醤油味の芋煮は牛肉と醤油の相性が程よくマッチしています。米沢牛や山形牛、蔵王牛、尾花沢牛といったブランド牛を使った芋煮は、思い出の一品になること間違いないでしょう。また、日本一の芋煮会フェスティバルでは丸十大屋の味マルジュウというだし醤油が使われています。江戸後期から続く山形の企業で、芋煮に合う醤油としておすすめです。
締めには、うどんを入れたり、カレーうどんにしたりするのはいかがでしょうか。
![]() |
![]() |
・里芋 650g
・平こんにゃく 120g
・牛肉(薄切り) 280g
・ネギ 120g
・しょうゆ 大さじ4
・砂糖 大さじ1、1/2
・酒 大さじ3
・水 800ml
①里芋は、大きいものは2つに切り、ぬめりを取るために塩でもんで洗う。
②こんにゃくは、手でちぎって下茹でする。
③牛肉は5cm位に切り、ねぎは斜め切りにする。
④鍋に里芋と分量の水を入れて火にかける。煮立ったら、こんにゃくと調味料の2/3量を入れる。
⑤里芋がやわらかくなってきたら、牛肉を入れてあくを取りながらさらに煮る。
⑥最後に残りの調味料とねぎを入れて味をととのえる。
・里芋のあくをこまめに取る。
・牛肉を先に醤油と砂糖で味付けして、取り出し、その汁で里芋を煮て、後から牛肉を戻しても美味しい。
山形市公式HPより/ https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/kenkofukushi/iryou/shokuiku/1003317/1007212/1003301.html
県内で唯一味噌をベースに芋煮を作っている庄内地方。なんと牛肉の代わりに豚肉を使っているんです。その理由は、米作りが関係しています。
庄内では昔から米作りが盛んで、良質な田んぼにするため、農家は家畜を飼っていました。中でも養豚が盛んだったことで、生まれたのが庄内豚です。その影響もあり、牛肉より豚肉が芋煮にも入れられるようになりました。そして、豚肉には味噌が相性がよかったため、他の地域とは違う味付けが生まれたのです。
庄内地方の伝統食材である油揚げを入れるのも他にはない特徴です。ちなみに、庄内では一般的な厚揚げのことを油揚げと呼び、油揚げのことを油揚げの皮、薄揚げなどの呼び方をしています。
庄内は日本海に面しているため、浜辺で芋煮会ができます。
・里芋(ずいき芋などでも良い) 200~300g
・豚肉 150~240g
・長ねぎ 100~150g
・こんにゃく 150~200g
・油揚げ 1枚
・しいたけ 4枚
・味噌 大さじ3~6
・酒 大さじ2
・水またはだし汁 650cc
①里芋はひと口大に切り、 こんにゃくは手でちぎって、それぞれさっと下茹でする。
②豚肉は3〜4cm、油揚げは食べやすい大きさに切る。 しいたけは石づきを取り4等分にする。
③鍋に分量の水またはだし汁と、里芋、こんにゃく、酒を入れて煮る。
④芋がやわらかくなってきたら、豚肉、しいたけ、油揚げを加え、味噌で味付けし、最後に斜め切りにした長ねぎを入れる。
・皮付きの里芋は、泥を落としてお湯でさっと煮ると、手で簡単に皮がむける。
・人参を加えると彩りが良くなる。
・豚肉を下茹でしてから加えると、あっさりとした出来上がりになる。
・酒の代わりに酒麹でも良い。
つるおかおうち御膳より/ https://www.creative-tsuruoka.jp/ouchigozen/recipe_all/085.html
毎年10月頃に道の駅川のみなと長井で開催されている「長井1000人いも煮会」。地元の食材を使った定番の醤油味の芋煮のほかに、馬肉と塩を組み合わせた”旨SIOいも煮”が人気です。醤油味や味噌味に並ぶべく、開発されました。イベントでは、ほかにも様々な創作芋煮があり、自分好みの芋煮を発見できるかもしれません。
また、馬肉には鉄分やグリコーゲンが他の肉より多く含まれているため、貧血の方におすすめの健康食でもあります。
おきたま観光情報サイト/ https://oki-tama.jp/eventdetail/?no=8071&year=2025&month=9
中山町観光協会・中山町が主催の芋煮会です。このイベントでは先ほど紹介した芋棒煮を現代風にアレンジしたものを食べることができ、ほかにも山形県内の芋煮や仙台、岩手の芋煮といった東北のみでなく、日本三大芋煮の島根県と愛媛県の芋煮も食べることができます。
2024年からは未来の芋煮レシピコンテストが開催されています。コンテストに応募された芋煮は芋煮会の来場者が試食し、最優秀が決まります。これからどんな芋煮が生まれるのか、楽しみですね。
中山町観光協会サイト/ https://www.town.nakayama.yamagata.jp/index.html
最新の情報とは異なる場合がありますので、ご確認の上、お出かけ下さい。