TRIP でかける

車いすライターが行く!本当に楽しいやまがたの旅

山形のバリアフリー温泉 Vol.2

多彩な湯巡りを愉しめる展望の宿へ!

開湯から約560年の歴史がある温泉地「かみのやま温泉」。かみのやま温泉駅から徒歩10分、様々な“湯巡り”が愉しめる宿として親しまれる「展望露天の湯 有馬館(てんぼうろてんのゆ ありまかん)」さんをご紹介します。

玄関脇に隣接した身障者駐車場。入口には左右二箇所にスロープを完備

「こんにちは! ZERO☆23・ヨミウリウェイ編集部のカイです! ここかみのやま温泉にバリアフリーで、しかもバラエティ豊かな湯船を備えた宿があるという噂を聞いてやって来たのがこちらの有馬館さん。」

「有馬館」へ到着! 

早速入り口のスロープを通り中へ! 広々として、明るくモダンな造りのロビー。緩やかな傾斜のスロープが備え付けられています。

広めに幅を取ったスロープで車いすでも安心して利用出来ます

まずはチェックインを行うためフロントへ。カウンターは2箇所あり、そのうち一つは車いすの高さに合わせた造りに。車いすユーザーの目線に合わせた配慮が嬉しい!

目線を合わせることのできる造りのカウンター。チェックインもスムーズに行えます

そしてロビーではペッパーの「有馬くん」がお出迎え! 有馬くんがおしゃべりでおもてなしをしてくれます。 しかし、取材時の有馬くんは調子が悪いそうで冊に囲われておりました。 そういう時もあるよな…。わかる…。 その他にも貸切風呂の予約をロビーのタッチパネルから行うことができます。

貸切風呂の予約はこのタッチパネルから行うことができます

冊に囲われるペッパーくんなんだかシュール…
くつろぎの時間を過ごせる快適な客室

続いてエレベーターで客室へ。中には車いすユーザーや子どもがボタンを操作出来るよう、専用の棒が備え付けられています。ユニークなアイデア!

ボタンに手が届かない人のための工夫。マジックハンド的な?

車いす1台分ほどの幅。エレベーターに入れる幅であれば中で旋回も可能

各階には山形をモチーフにした切り絵が。この階は上山の民俗行事「加勢鳥」の階。五穀豊穣や商売繁盛などを祈る上山市の伝統行事です。他にも山形の樹氷など、ざまざまなモチーフがあるので探してみるのも楽しい!

「ケンダイ」というミノをかぶった人が手桶から祝いの水をかけられる様子

客室の玄関は2つに分かれており、片方はスロープになっているので車いすのまま入ることができます。

スロープを上がってそのまま客室へ入ることが出来ます

入り口のドアは押して入る開き戸。室内は全て引き戸になっている。入り口に段差はなし

明るく落ち着いた和室にツインベッドが備え付けられています。室内は車いすのまま利用することができ、テーブルも車いすに合わせた高さに。段差もなくお年寄りの方にも使いやすい造りになっています。

和室+ツインベッドルーム+広縁70㎡

手すりのある広々と使えるトイレ

洗面台は下にスペースがあり、車いすでも使いやすい

ベットの側まで車いす行けるスペースがあります

さらにこちらは東館の特別和洋室。他の和洋室より広さ、設備ともにワンランク上の部屋。家族でゆっくりと過ごせる広さがあります。窓からはかみのやまの景色を眺められる。

特別和洋室(10畳プラスツインベッドルーム)
入るも飲むも良し?人に優しいやわらぎの湯

続いては貸切風呂「やわらぎ」へ。ロビーのある1階へ戻りスロープを通って脱衣所へ。

脱衣所は車いすのまま使える十分な広さがある

スロープを登って貸切風呂へ

手すりはもちろん、床は全面フラットになっており、浴槽の縁は腰を掛けやすいよう広めの造りに。車いすでも利用しやすい設計になっています。シャワーキャリーの貸し出しも可能。

貸切風呂「やわらぎ」
両手どちらでも使える手すりや湯の深さ(座る位置)を調節できるように、湯船の中に入れられる椅子も用意されておりバリアフリーに特化した造りなっている

キャリーを使ってシャワーの利用が可能

腰を掛けやすいよう浴槽は広めに造られています

「展望露天の湯」の名の通り、有馬館さんには7階に旅館自慢の展望露天風呂が。四季の移ろいや風を感じられるのが気持ちいい~。かみのやまの景色を眺めながら湯浴みが出来る贅沢な空間。月見をしながら入るのもよさそう! 展望風呂までは4段程の階段があるため車いすで利用の際は宿とご相談を。

「展望露天風呂」
周辺の山々と上山の町並みを一望できる見晴らしのいい展望露天風呂。17:00~24:00まで30分単位の先着予約制で貸切の利用が可能

貸切風呂「パムッカレ」
トルコ語で“綿の宮殿”という意味をあらわす「パムッカレ」は、純白の棚田のような景観が特長の世界遺産。それを模して造った貸切風呂。他に類を見ない幻想的な湯船

貸切風呂「貴宝石風呂立湯」
“美肌の湯”が愉しめる貸切風呂。肌にいきわたる微細気泡が心地よく、適度な水圧が全身を癒してくれる。しっとりと潤いを与えてくれる自慢の湯

「金の湯」
大正10年に源泉掘削され、湯量が豊富で1分間に1石2斗 (116リットル)の湯が滝のように流れていたそう。「金の湯」と呼ばれ親しまれている。金の湯には大浴場の他に「信楽焼きのお風呂」「貴宝石岩盤浴サウナ」を併設している

浪漫湯大浴場
5種類のお風呂を楽しむ「浪漫湯」大浴場。「大浴場」「アメリカンスパ」「貴宝石風呂」「貴宝石岩盤浴」「半身浴」の計5種類の湯船を完備
浴用・適応症
神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え性・病後回復期・疲労回復・健康増進・動脈硬化症・きりきず・やけど・慢性皮膚病・虚弱児童・慢性婦人病 など

※貸切風呂「やわらぎ」を除く温泉についてはバリアフリー対応ではないため、移動や入浴に介助が必要な場合があります。ご利用の際は施設とご相談の上ご入浴下さい。

 

そしてなんとここ有馬館さんには特別に許可された飲泉所があり、温泉を飲むことも出来ます。温泉の守り本尊の薬師如来像から出た温泉をいただきます。ミネラル豊富で身体にいいとか。ただし飲み過ぎには注意。

ご利益ありそう。ありがたくいただきます

 

どうしてバリアフリーの宿に?須藤社長に聞いてみた!
有馬館を運営する代表取締役 須藤信晴さんにバリアフリーの宿をつくったきっかけをお伺いしました

 

須藤社長、今日はありがとうございます! 早速ですが宿をバリアフリーにしようと思ったきっかけはなんですか?
義理の父は足に障がいがあって、義足だったもので温泉に入れなかったんです。当時はバリアフリーという感覚はあまりなかったのですが、父が入りやすいように貸切風呂が良いんじゃないかという発想で、お風呂をつくったのがきっかけですね
なるほどお父さんがきっかけだったんですね。貸切風呂をつくられたのはいつ頃ですか?
平成七年なのでもう24年くらい前ですね。当時うちの隣に旅館があってそこを買い取って、一部利用したんですが、広かったことと、段差が少なかったんです。父は義足でなおかつ車いすでも移動するので、フラットなのがいいなと思い、小さい段差も全てスロープに改修して、車いすでも近くまで入れるようにしながら貸切風呂をつくっていきました
貸切風呂ができてからの反響はいかがでしたか?
まだまだ改善していかなければいけないこともあるんですが、施設の詳細な情報をウェブなどで発信していったお陰で、お問合せは多く頂けるようになりました。身体の状態に合わせてお客様がこれなら入れそうだな、とか利用できそうだと情報を見て伝わるようになったので利用して頂けるお客様も増えました
貸切風呂がある旅館ってなかなか少ないですよね。温泉の情報を知ることで安心して温泉に来られるのは嬉しいですね
当時貸切風呂というのは少なかったですね。ただ貸切風呂をつくることになり、旅館全体を見直すきっかけにもなりました。当時は貸切風呂に行くまでぐるっと回らなければいけなかったり、別の棟に行くのにエレベーターが繋がっていなかったりと効率の悪い建物だったので貸切風呂がバリアフリー化に大きく舵を取ったきっかけにもなりました
有馬館さんにはバリエーション豊かな浴室がありますが、色々な浴室をつくろうと思ったきっかけは何ですか?
これはコンプレックスから始まっていて(笑) うちの旅館は大通りに面していなかったので、隣の旅館を買い取るまでは入口がどこからも見えなかったんです。お客様も看板はあるけど、どこから入ったらいいかわからないと言われました。でもこの辺りではお湯の歴史はうちが一番古いんです。それなら単純にお風呂が男女別にあるだけではなくて、変わった浴室にしてお客様にもっと知って頂こうと。でもあまり変わっていると、嫌いな人もいるかもしれない。だから変わったものを少しやろうと思い、それがいっぱいになっていきました
これからされてみたいことや、こうしていきたいと思うことはありますか?
いっぱいあります。いっぱいありすぎて(笑)どうしても露天風呂に行くのに四段くらい段差があったり、大浴場のお風呂の段差が高くなっているので、そういったバリアをなくしていきたいのが今後の課題です。スロープを設置してしまうと、歩ける人はスロープを乗り越えないといけなくなってしまうこともあるので皆が使いやすいような工夫が必要ですね。今はバリアフリー化の改修には国の助成金が出るので、少しずつ改修を行っていきたいです。 後は山形バリアフリー観光ツアーセンターの協力を得ながら私のところだけではなく、かみのやま温泉や、山形県全体でやっていきたいという気持ちもありますね

 

須藤社長ありがとうございました

 

取材メモ

独自の工夫とアイデアで多彩な湯処を増やしてきた有馬館さんは「お客様に喜んで頂きたい」というそんな一途な想いの溢れる宿でした。バリアフリーは特別なことではなく、そんな中にある一つの自然な取組みだったかのように思います。一度では入りきれない浴室の数々に何度も足しげく通ってしまいそうです!

\ カイのすごいポイント/
  1. 10種類以上の湯処を備えた“湯巡り”を愉しめる宿
  2. 切り絵をモチーフとした選べるバリアフリー客室
  3. かみのやまの景色と四季の移ろいを愉しむ展望露天風呂

 

旅館DATA

かみのやま温泉 「展望露天の湯 有馬館」
住所〒999-3141 山形県上山市新湯6-5
TEL023-672-2511
チェックイン15:00
チェックアウト10:00
泉質ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉(低張性 弱アルカリ性 高温泉)

施設
車いす駐車場 1台分あり(要予約)
駐車場から玄関まで スロープ2か所、駐車場から約1m
送迎の有無 車いす乗車可能な送迎車あり。JRかみのやま温泉駅間の送迎(要予約)
貸し出し備品 車いす2台、簡易ベッド、座敷いす(要予約)
バリアフリー対応 4室
ロビーから客室への移動 エレベーターあり、段差なし
オストメイトの対応 なし

入浴
貸切風呂 バリアフリー対応貸切風呂「やわらぎ」
車いすのまま脱衣所、浴室まで移動可能
大浴場 脱衣所まで1段の段差あり
露天風呂 脱衣所まで数段の階段あり
入浴用貸し出し備品 浴室用車いす(介助用、ハンドリムなし)、シャワーチェア
入浴介助制度 あり(有料外部ヘルパーサービスを利用 ※要予約)

詳細につきましては施設までご確認、ご相談ください。

ホームページはこちら

最新の情報とは異なる場合がありますので、ご確認の上、お出かけ下さい。

この記事を書いた人
カイ

山形生まれ山形育ち。抹茶を愛するアクティブ車いすユーザー。ZERO☆23、ヨミウリウェイ編集部のデザイナー、時々ライター。

TOPICSトピックス

RANKING!人気記事

Related!関連記事