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#秋の湯まち散歩 #ZERO☆23 #鶴岡市
掲載号:ZERO☆23 2020年11月27日号
ぶどう畑をつくってこそ ワインをつくる意義がある。
酒井家16代目・酒井弥惣(やそう)氏はバイタリティあふれる人物だったようです。弥惣氏はワインづくりに着目し、初代県令三島通庸が果樹振興策を施行すると、ワイン用のぶどう栽培を始めました。18
92(明治25)年にはぶどう酒製造に成功し、東北最初のワイナリーに。酒井家は地元の名士。ほかに運送業や醤油製造、海産問屋なども行い、晩年は赤湯町長として力を尽くしました。
ワイナリー5代目・酒井一平さんは東京農大の大学院で醸造を学び、2004(平成16)年に赤湯へ戻ってきました。かつてのぶどう畑は人が立つことさえ困難な急斜面につくられており、農家の高齢化などで耕作放棄が進んでいます。酒井ワイナリーはそれらの畑を引き受け、親戚の畑を引き継ぎ、家族で自社の畑を増やしました。10年前には羊を導入。100年前の農家のやり方を再現しているそうで、農耕馬の代わりに羊を入れ、ぶどう棚の下の雑草を食べてもらい、肥料をつくっています。「東日本大震災で電気や水、ガソリンが止まった経験は昔の製法や道具について、振り返る機会になった」と一平さん。日本酒の一升瓶を使ってろ過する、ノンフィルター製法を続けているのは、「昔からのここのやり方は、手間がかかるけれど、オリ(発酵をおえた酵母)による旨みがあるから」と話してくれました。
今も製造しているバーダップワインは、数種類のぶどうを全て一つのタンクに入れ、全房を発酵させるという独自のスタイル。芳醇であり複雑で、赤湯ならではのワインといえます。一平さんは一つの畑にぶどうを混植し、それらを混醸したワインなどもつくっており、独自の取り組みは、外国のワイン生産者にも注目されています。ワインに対する一平さんのバイタリティ。これは弥惣さんから引き継いだものかもしれません。
土蔵
日本的な美しさがある創業当時の土蔵。出荷までの時を待つ熟成用の樽と、ノンフィルター用の傾けた一升瓶が並んでいます。
現在の代表的銘柄は「マスカットベーリーA ブラッククイーン」(2,750円)。2つの自社畑で収穫した2つの品種を混ぜて醸造し、樽で醸成した赤ワイン。
2番目のおすすめワインは「バーダップワイン白」(2,200円)と、高い品質で知られる山形のデラウェアを使った「デラウェア」(2,750円)。
一平さんの妻、千春さん。ワイン販売に携わっていたことから、ワインの知識が豊富。主に店舗で接客・販売などを担当しています。
おごることなく、屈することなく、今できることを精一杯やるという意味。酒井弥惣氏から引き継ぎ、末永く愛飲いただけるよう努めています。
一升瓶にワインを詰め、瓶を傾けてオリを沈殿させ、上澄みだけを詰め直します。昔からろ過機がなく、今も同じやり方を続けています。
ぶどう棚の下で羊を放牧。羊は草、ぶどうのしぼりカスを食べ、糞は堆肥となり、ぶどうに還っていきます。
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