MY WAY PEOPLE　あーと書道家　未來 さん

自ら選んだ道に向かい、まっすぐに挑み続け輝くひと。

掲載号：ヨミウリウェイ 2020年1月10日号

• ヨミウリウェイMy Way People

筆を操る　筆文字で遊ぶ　アートな世界観を創り出す

独自の世界観で筆文字のイメージを変える

山形市を見渡す高台にひっそりと佇む一軒家。書道家・未來さんの作品は、このアトリエから生み出されます。中に入ると目に飛び込んできたのは、山積みの書道紙。今朝まで仕事を続けていたことは想像に難くありません。「クライアントの希望を100％以上叶えるためには見えない努力を続けていかないと。徹夜したり、大変な時もあるけど好きな仕事ですから」。そう話す未來さんの作品は墨一色で描く本格的な筆文字から、色墨を使って描くユニークなデザイン文字まで実に表情豊か。イメージした文字を形にするためには筆選びがポイント。筆先の長さや太さ、毛質といった筆の個性によって、力強さや伸びやかさ、しなやかさなど表現の仕方が異なります。複数の筆を操りながら、独自の世界観を創り出していきます。

「動」のスポーツ女子を支えた「静」の魅力

書道を始めたのは10歳のとき。「字が下手だから習いに行ったら？」という母親のひと言がきっかけでした。週に一度書道教室に通い続け、18歳で師範の免許を取得するまでに。
　これまでずっと書道を優先に過ごしていたかと思いきや、実は根っからのスポーツ女子。高校まで続けた陸上競技では、中学の県大会の時に800mと1500mで優勝。スキーのクロスカントリーでも中学のJrオリンピックで７位と輝かしい成績を収めました。進路として自衛隊を志したのも「体を動かせる仕事がしたい」という理由から。高校卒業後は念願の自衛官となり、東根市に赴任。山形での暮らしが始まりました。自衛隊では懸垂、腹筋、腕立ては毎日の日課。「部活の延長みたいで楽しい」と充実した日々を送る一方で、筆を持つことは自分を癒す手立てでもあったのです。「いつかは書道を本業にして、筆文字の魅力を伝えたい」。その思いは徐々に強くなっていきました。

自由な発想が筆文字の可能性を広げる

6年間勤めた自衛隊を退職し、2週間後には個展を開催。「売れるはずないと思っていたのに作品が売れて。お客さんに教えてもらいながら初めて領収書を書きました」。この無謀とも思える行動が未來さんのその後を変える契機となったのです。個展後には仕事の依頼が舞い込み、自ら営業した雑貨店で作品を置いてもらったことからテレビの取材を受けることに。「 できない と言わずに引き受けていたら想像もしなかった仕事をいただくようになり、少しずつ自分をバージョンアップしてきました」。イベントで書道のパフォーマンスや筆文字の技術や楽しさを伝える講座も、依頼が来て始めたこと。筆文字をデザインするだけでなく、商品パッケージの企画やパンフレットのデザインなど、活躍のフィールドは広がるばかり。「自分の可能性を知るためにも様々なことに挑戦していくことが大事。10年前の私が今の自分を想像できなかったように、10年先の私は何をしているのか考えただけでもワクワクします」と未来に自分を重ねます。

臨場感ある書道パフォーマンスは、イベントでも人気。	講演会や講座を通し、手書き文字の魅力を伝える未來さん。
自衛官時代の勇姿。	陸上、スキーとスポーツに明け暮れた小中高時代。
しなやかに、そして時には強く。筆が紙上を遊ぶ。	色墨を使い、滲みでニュアンスを表現した優しい作品。

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