掲載号:ヨミウリウェイ 2019年10月10日号
和服を身にまとい、黒塗りのマスクで顔を覆って、舞いながら和菓子を作り上げるパフォーマンス。その独特な世界観が話題を呼び、SNSを中心に注目を集めている和菓子表現家の土屋タダヒロさん。動画に映し出されるクールな表情とは異なり、素顔はやわらかな雰囲気が漂う人。和菓子職人、アーティスト、パフォーマー…ジャンルにこだわらず、常に「和菓子を表現する」ことを追求しています。
「小さい時から和菓子が好きで食べていましたが、まさかこの世界に入るとは思ってもいなくて」と話す土屋さんは、高校卒業後はデザインの専門学校に入り、フォトショップやイラストレーターを使いながらグラフィックデザインを学びます。専門学校を卒業してすぐにパッケージ会社に就職しましたが、1年後に退職。それ以降、飲食店でアルバイトをする傍ら、学生時代からの夢だったイラストレーター・絵本作家を目指し、絵本を自費出版したり、路上で自作のポストカードを販売したりしながら活動を続けてきました。 そんな土屋さんが和菓子職人を目指すことになったのは、たまたま入った菓子店で和菓子を目にしたことがきっかけでした。いつもなら何気なく見ていたはずの和菓子の優しい色合いと繊細なデザイン。「この和菓子はどうやって作るんだろう。自分も作ってみたい!」和菓子に魅せられた土屋さんは、それからまもなく老舗の菓子店に就職し、和菓子職人としての一歩を踏み出したのです。「初めは上生菓子を作る先輩たちの手の動きが、まるで魔法を使っているようで驚きの連続。技術を覚えるほどに和菓子の魅力に引き込まれていきました」。
菓子作りを学びながらその素晴らしさを知る一方で、土屋さんは若い人たちの和菓子離れを肌で感じ、「おいしいだけでは伝わらない」ことに危機感を抱くように。そこで、考えたのがSNSでの発信でした。まずはインスタグラムにキャラクター風の可愛いお菓子の写真を投稿するところから始めたものの、これではありきたり。上生菓子を作る職人のカッコ良さが伝わりません。そこで思いついたのが「自分がパフォーマーとなり、上生菓子を作る過程を動画にアップする」ということでした。「和菓子を通して和の文化を感じてもらいたい」と和服を着て、能面からイメージしたマスクをかけて作成した動画の再生回数は、みるみるうちに増えていったのです。最近はイベントや介護施設などに呼ばれる機会も増えた土屋さん。パフォーマンス後は上生菓子のプレゼントも。「おいしい と食べてくれるお客さんのリアクションが何よりうれしい。私の基本はあくまでも和菓子職人ですから」。和菓子の魅力を伝える土屋さんの挑戦は留まるところを知りません。
可愛い動物をモチーフにした和菓子は子ども達に大人気! | 背景には和傘。優雅に舞いながら、扇子を小道具に和菓子を完成させていきます。 | 例えば「花火」ではなく「夏夜の花」のように、菓名は日本文化の素晴らしさを伝えられるようこだわって名付けています。 |
Instagram @tadahiro_tsuchiya
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