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曾祖父と父が開いた工人の道、私らしく歩めたら

こけし工人 志田楓さん

掲載号:ZERO★23 2021年1月27日号

1996年生まれ。山形デザイン専門学校卒業。石川県立山中漆器技術センター修了。創作こけしの制作を開始。2020年には伝統こけしの工人として作品を発表。

高校2年生のときに、「私が継がなければ、この家に伝わるこけしがなくなってしまう」と、家を継ぐ決意を固めました。  

 木の素朴な風合いに、かわいらしい表情。こけしは若い女性の間で人気となり、こけしを収集する「こけ女」も登場しました。こけしをつくる職人といえば、顔や胴体に絵付けする姿を想像する方も多いでしょうが、それはほんの一部。絵付けに至るまでにさまざまな工程があります。木材を数年かけて乾燥させ、大きな電動のこぎりで切ってから、こけしに近い形になるよう「木取り」という作業をします。胴体部分と頭部、それぞれを電動ロクロで回転させながら「かんな棒」という刃物を当てて削るのです。ロクロが使えるようになるまで、昔の職人は数年を要し、刃物は職人自らが鍛造するのが当たり前といわれています。

 大井沢にあるこけし工人の家に生まれたのが楓(かえで)さんです。菊摩呂こけし工房には曾祖父・菊摩呂さんと、父・菊宏さんだけがつくることができる『菊摩呂』と『大正型』という、独自のこけしがあります。菊宏さんが絵付けする姿は、日常の風景だったそうで、彼女自身も絵を描くのが大好き。「こけしの絵付けは身近すぎて、意識したことすらなかった」のですが、自分の進路を考える高校2年生のときに、楓さんの「思い」があふれだします。「私が継がなければ、この家に伝わるこけしがなくなってしまう」と、楓さんは家を継ぐ決意を固めました。  

 

楓さんがつくった菊摩呂工房のこけし型。左側2つが「大正型」、3本目が「菊摩呂型」。

 

「自分の気になるところは、他人は2倍気になる。アラや違和感がなくなるまでキレイに」と教えられた言葉はいつも意識の中にあります。

 「まずは視野を広げよう」とデザインの専門学校に進み、デザインや写真、ウェブを勉強。さらに父・菊宏さんの意向を受け、石川県の研修所で木材から器やおぼんなどを削り出す、木地引き(きじびき)を学びました。「自分の気になるところは、他人は2倍気になる。アラや違和感がなくなるまでキレイに」と教えられた言葉はいつも意識の中にあります。

 2019年には菊摩呂工房に戻り、創作こけしをつくり始めました。「小さくてころんとしたのがつくりたい」とさまざまな形に取り組んでいます。「顔の絵付けは緊張するので、気分が落ち着いたときに一気に。胴帯部分には自分の描きたいものを描きます。今なら椿などの季節の花が多いですね」。かわいらしい作風は、販売店の目に留まり「楓こけし」として人気商品に。伝統こけしにも取り組み、昨年は工人としてデビューしました。これからの活躍に期待が集まっています。

相良人形8代目相良隆馬さんに許可を得て、「猫に蛸」をこけしで制作。猫にクラゲがのった「猫にクラゲ」は楓さんのオリジナル

菊摩呂こけし工房
住/西村山郡西川町大井沢1032 
電/0237-76-2416
※夏季はギャラリーを開設。冬季は休み
主な販売場所/尚美堂(七日町店、エスパル山形店)、 水沢温泉(西川の道の駅)、大井沢伝承館(冬季を除く)
Instagramあり

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